以前、カンチブレーキのアーチワイヤーについての考察を書きました。
「ワイヤーの引きしろが長い方が力率が良い」という考察です。
過去記事
カンチブレーキの三角形
(完) カンチブレーキの三角形
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私的には完結していたのですが、新たにコメントをいただきましたので追加検証しました。
アーチワイヤーをカンチブレーキのアームに対して直角にした方が力率が良いのか?
言い換えると、こういうことです。
棒の端に紐を付けて引っ張るとき、垂直に引いた方が少ない力ですむのか?
カンチブレーキの機構を力学的に紐解くのは難しいです。というか僕には無理です (-.-)
仮に数式で解明できたとしても、それを見て理解できる人も少ないと思います。
なので、手っ取り早く実験しました。
単純、明快、だれにでも納得いただけると思います。
カンチブレーキの図と、実験装置の比較です。
力の測定は、重さで測ります。
滑車チドリを逆さにして下向きに引くことで重さを測ることができます。
滑車チドリは定滑車なので、これによる力率の変化はありません。
片側アームだけですが、これで十分ですよね (^^)
実験1
アーチワイヤーを長くして、アームと鋭角にした場合。
(マファックがこれくらいでしょうか)
重りの数は9個。
実験2
アーチワイヤーを長くして、アームと直角にした場合。
重りの数は7個。
実験3
アーチワイヤーを短くして、アームと鋭角にした場合。
重りの数は10個。
実験4
アーチワイヤーを短くして、アームと直角にした場合。
(シマノのロープロファイルがこれくらいでしょうか)
重りの数は3個。
結論。
アーチワイヤーをカンチブレーキのアームに対して90度より大きくした方が力率が良い!
実際のブレーキに当てはめてみましょう。
マファックタイプカンチブレーキの場合、上記の角度を鈍角にすることはできませんので、アーチワイヤーは長い方がいいです。
ただし、短くした場合との差は10%程度です。
ロープロファイルカンチブレーキの場合、鈍角にするとワイヤーの引きしろが短くなりますので力率が相殺されます。
どの程度相殺されるかは分かりませんが、シマノのブレーキとアーチワイヤーを参考にするのが良いでしょうね。
今回の実験で、以前にCADで描いて考察した引きしろと力率の関係を肯定する結果となりました。
それにしても、シマノのロープロファイルカンチは良く考えられていますよね。
きっと開発者は「これでカンチブレーキが効かないなんて言わせない」と豪語したことでしょう。