幅員5.5m未満をゆく

自転車とサイクリングの日記です。

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リカンベント Cruzbike T50 の備忘録

Cruzbike T50(以下T50)というリカンベント
組み上がってから4ヶ月ほど経ちましたので、この時点での備忘録を記しておきます。

走行距離 1,200km
一日の走行距離 140km 前後
一日の獲得標高 2,000m 前後

追記 2020/09/12:2年7ヶ月経ちましたが、ここで書いたことと大きな違いはありません。シートリクライニングは46度にしました。


目次

  1. 車種分類
  2. 機構
  3. 前輪駆動によるハンドリングへの影響
  4. ホイール
  5. 重量と前後のバランス
  6. 乗り心地
  7. 駆動力(追記あり)
  8. 平地の速度
  9. 上り坂の速度(追記あり)
  10. 脚の筋肉
  11. 首が凝る?
  12. 背中が蒸れる?
  13. 発進が遅い?
  14. オフロードは走れる?
  15. 歩道の段差は滑る?
  16. その他の気持ちよさ
  17. 人の目

組み立てまでの写真
https://goo.gl/j3nevR



車種分類

リカンベントにも普通自転車のように車種があり、T50はCruzbike社のラインナップでは日常使用を想定しています。
シートリクライニングが比較的立っていて、風の抵抗は増えますが乗車姿勢の違和感が少なく、とり回しが楽な設計です。
普通自転車が車種を越えて比較できないのと同じように、リカンベントも車種によって性能が大きく変わります。
一概に「リカンベントは云々…」というのはナンセンスです。


機構

Cruzbike社がパテントを取得している前輪駆動方式です。
一般的なリカンベントは後輪駆動で、車体の一番前から後輪まで長いチェーンで駆動しています。これに比べるとチェーンは短く(一般自転車と同程度)、伝達効率がいいです。
後輪駆動は長いチェーンと中間部でプーリーによって方向を変えることが伝達ロスを生んでいる、という意見があるようです。

ポジションに関わるパーツが調整可能になっています。
調整できるのは次の4箇所。
 シート前後
 シートリクライニング
 シートとBB間の距離(ブームの伸縮)
 ハンドル上下

※ シートの座面角度はプロトタイプでは調整できましたが、量産型では調整不能です。


前輪駆動によるハンドリングへの影響

乗車して最初に感じる高いハードルです。
イメージとしてはハンドルを蹴飛ばしながら走るようなもので、ペダリングに合わせてハンドルを腕で押える必要があります。
最初から乗れないことはありませんでしたが、左右へのふらつきが大きく車道を走るのが凄く怖かったです。
3ヶ月くらいで身体が鼓動に慣れ、何事も無かったように普通に走れるようになりました。

もしこれを読んでいるあなたが、前輪駆動のリカンベントを購入したばかりで不安を感じていても心配はいりません。慣れます!

走行中の小回りはできません。
ヘッドチューブを跨いだ先にペダルがありますので、ハンドルを切ると外側の足が遠くなります。
直進時のペダリング効率に合わせてペダル位置(BB位置)を調整すると、ハンドル曲げ角はせいぜい20度くらいです。
平地なら漕ぐのを止めれば小回りできます。九十九折の上りはかなり神経を使います。


ホイール

標準は26x1.75HEですが、僕は650x32Bを装着しています。
700x28Cを装着している写真を見たことがあります。ギリギリなのはクラウン部分。
ホイール径の違いによるハンドリングの変化は、前輪駆動の影響により体感できるほどではないようです。


重量と前後のバランス

T50の重量は14.5kgです。
乗車した状態で前後のバランスは凡そ 4 : 3 です。前後比は 1.333
ちなみにロードバイクでは凡そ 4 : 6 です。前後比は 0.666

前輪荷重が大きいことによる懸念は、急坂の上りでスリップしないか、急坂の下りでブレーキをかけて前転宙返りしないか、です。
結論は、凡そ20%くらいまでの勾配ならば、上りも下りも心配ありませんでした。

コーナリングは素直で特に不安を感じることはありませんが、普通自転車に比べると安定性は低いです。
これは重心(お尻)が地面から600mmくらいの所にあるためです。普通自転車ではペダル下死点が150mmくらいでしょうか。

直進時の安定性は普通自転車に比べて劣っているとは感じません。超低速も不安はありません。


乗り心地

フレームはアルミニウム製です。
一般的にはアルミは硬い(振動を感じ易い)と言われていますが、T50はソフトな感触です。
ホイールベースが普通自転車よりも凡そ100mm長いことと、メインフレームの長い直線部が撓る(しなる)からだと思います。

ブレーキングによる姿勢変化があります。
どういうことかと言うと、停止状態で前ブレーキを掛けて前後にゆするとハンドル部に歪みを感じます。ヘッドパーツをガタの無い状態にしても、ヘッドから伸びている延長パイプが長いためです。
また、前述のフレームのしなりがブレーキングにより解放されますので、お尻を下からもちあげられるような感覚があります。


駆動力

T50はペダルへ掛ける力の反力を腰から背中の範囲で(シートで)受け止めます。逃げることがありませんので高効率です。この為、普通自転車よりも重いギヤ比を踏むことができます。
力率はシートリクライニングと腰とBB位置に左右されますので、シートリクライニングが寝ているリカンベントの場合がどうかは分かりません。肩を固定して力が逃げないようにしているリカンベントもあります。

ちなみに普通自転車では、ペダルへ掛ける力を体重で受け止めたり、ハンドルを引く腕で受け止めていますので力が逃げます。トラックレースやロードレース等で高回転の場合には、逃げる力は少なくなります。

追記:
リカンベントによるペダリング効率を研究した人がいて学術論文を書いています。
それによると、脚とお尻とシートの角度が140度の時に最も力が出るそうです。言い換えると脚が水平ならシートリクライニング40度が良いことになります。


平地の速度

T50はリカンベントの中ではシートリクライニングが立っていますので空気抵抗は多めですが、それでもロードバイクよりは少ないです。
時速30kmで巡航するくらいの力で時速33kmくらいになります。
前評判の通り平地は得意です (^^)


上り坂の速度

これまでの経験では、やはり遅いと言わざるをえません。10~15%は遅いです。
リカンベントは上りで立ち漕ぎができないから遅い」という意見がありますが、普通自転車のシッティングだけと比べてもT50は遅いです。
理由はわかりません。重さだけではないようです。ペダル位置やシートリクライニング、踏み方など、今後も試行錯誤していきます。

なお、急勾配の登坂能力は普通自転車と同程度です。
勾配20%くらいの坂までは上ることができます。


追記(2019/07/26):
楕円チェーンリング(ROTOR Q-RINGS)を導入しました。
平地での変化は体感できませんが、勾配10%超の上り坂で体感でき、簡易的な速度計測で10%弱の効果がありました。
真円では上り坂でペダリング回転数が低い状態では、上死点付近でキツイ(重い)感覚がありますが、これが楕円で緩和されました。

追記(2019/10/01):
重量が同じなら、リカンベントは上りに弱く無かった!
Slyway Projects が実走テストで検証しています。
リカンベントの空力効率と上り坂の比較テスト
https://besport.org/sportmedicina/efficienza-aerodinamica-delle-biciclette-reclinate-test-comparativi-in-salita.htm
Google翻訳
https://translate.google.com/translate?sl=it&tl=ja&u=https://besport.org/sportmedicina/efficienza-aerodinamica-delle-biciclette-reclinate-test-comparativi-in-salita.htm

追記(2022/04/20):
子ノ権現の激坂(28%とも言われる)を上れました!
https://inter8.hatenablog.jp/entry/20220131/1643594433


脚の筋肉

シートからペダルまでの距離に大きく左右されます。
一般的に膝が曲がってる状態から伸ばす時には太腿前の筋肉が使われ、膝が伸びきる直前は太腿裏の筋肉が使われていると思っています。
現在のセッティングは、シューズを履いた状態で踵がペダルから1~2cm離れるくらい。QUARKパスハンよりも距離は短いです。

このセッティングで一日走った時の疲労感は、明らかに普通自転車よりも少ないです。そして太腿前の筋肉はあまり疲れません。
疲労度合は、お尻と太腿裏にかけての筋と筋肉、太腿裏の筋肉、太腿前の筋肉、の順です。

追記(2020/09/12):
坂の多いコースを一日走って帰ってくると膝周りの筋肉が疲れます。車重と勾配とギヤ比が影響していると思います。


首が凝る?

答えはノー。
T50の乗車姿勢はシートリクライニングが50度くらい、首は垂直なので疲れる要素はありません。
シートリクライニングがもっと寝ていて首を垂直にできないリカンベントの場合は首が凝るかもしれません。オプションでヘッドレストがあるくらいですから。
ロードバイクの場合は、前傾角が30度くらい、首の角度は垂直ではなく60度くらいでしょうか。常に力を入れている状態です。


背中が蒸れる?

もちろん蒸れます。標準シートでは2月の気候でもシート下に汗水が溜まりました。
しかし、Ventisit社のシートに換えてからはかなり蒸れなくなりました。マイカーのシートもVentisitにしたいくらいです。
お尻の(座面の)痛みもなく快適です♪


発進が遅い?

めいっぱいの力で比較したことはありませんが、やはり普通自転車よりは遅いでしょうね。
立ち漕ぎ無しで競争したらT50が速いと思います。
3速くらいで発進してタイミングよくシフトアップしていけば勝てる自信はあります。内装ハブの利点もありますし。

ただ、両足を地面についている状態からの発進は、もたもたします (^^;
信号待ちでは青になるタイミングを見計らって準備していないといけません。


オフロードは走れる?

走れますが、あまり楽しくありません。
路面の凸凹振動が背中に響くので気持ちよくないんです。舗装路でも凸凹の時はシートから背中を浮かせます。
それと前輪荷重過多なので少しの上りでもスリップしてしまいます。

追記(2019/11/26):
よく締まったダートの下りは気持ちよく走れます。三国峠から中津川林道は勾配が緩く荒れている箇所も少ないので楽しめました。


歩道の段差は滑る?

今のところ滑ったことはありません。
意識して車道から角度を付けて歩道へ入っています。


その他の気持ちよさ

普通自転車では休憩時にどこかに座りたくなりますが、T50はそのものが椅子になります。背もたれ付きの椅子 (^^)v

コンビニで買った食べ物をシートの上に置けます。これ以外と便利。
置き場が無いとお弁当類は難しいですからね。

ポタリングに最適です。
前傾する自転車では脚に力を入れないポタリングだとお尻が痛くなってきますが、T50はそういうことまったくありませんし、空が広いです。


人の目

注目度は凄いです。
今までマイナースポーツをたくさんやってきましたが、その中でも一番です。その人目に耐えられないとリカンベントには乗れません。

高校生は三人集まると100m先にも届くくらい高らかに笑います。高校生とはそういう生き物です。
幸せを提供していると思って耐えましょう。


以上、現在までの備忘録でした。