発進、加速、巡航、上る、下る、曲がる、止まる。更には ゆっくり走る、速く走る。これらは凡そ自転車に求められる機能や要素ですが、全てにおいてリカンベントは前傾自転車に劣っていません。
え、ちょっと待って。「上るのは苦手ですよね」という意見があります。僕自身も今乗っているリカンベントでは上りは少し遅いと感じています。しかし、海外ではアップダウンがあるレースで前傾自転車に混じって優勝しているリカンベントもありますし、上り坂の検証でもリカンベントの方が心拍数が少ないことが明らかになっています。
リカンベントの空力効率と上り坂の比較テスト
立ち漕ぎについては過去にも何度か書いてきましたが、長距離ではエネルギー効率が悪い走法です。心肺ぎりぎりで攻める峠タイムトライアルではシッティングの方が優れています。少なくともリカンベントが立ち漕ぎできないことは遅い理由になりません。
リカンベントの構造や設計は各社様々で、乗る人と構造的な「何か」がうまく噛み合うと速く上れるのかもしれません。ここがリカンベントの「伸びしろ」と言えるでしょう。あるメーカーは重量に焦点をあて、あるメーカーは前輪駆動が有利だと言っています。リカンベントは生涯をかけて研究するに値する乗り物だと思います。
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その他ポジティブな要素は、このブログで僕の経験を見てくれている人には承知のことだと思います。加えて言うなら、安全で安心で幸福度増し増し。特に長いダウンヒルでは正に空飛ぶ絨毯的な気持ちよさが味わえます。スキーで広大な山の斜面を滑っている時にも似ています。
それと、あまり語られていないけれど特筆すべきことは、速く走れるのに、ゆっくりも走れるということです。シートリクライニング45度前後はこのバランスがとれているリカンベントです。時速30kmの巡航はいとも簡単なのに、時速10km前後で長時間走っていても気持ちいいです。
対して前傾自転車が速く走るには前傾を強くする必要があります。これは風の抵抗を少なくすると共に脚力のパワーと、これを受ける上半身のパワーの均衡をとるためです。その姿勢でゆっくり走るのは厳しい。ドロップハンドルの上部に手を置くことである程度リラックスはできますが、上体が直立しているシティサイクルには敵いませんよね。
例えると、3時間の映画を見るのに四つん這いになるか、背もたれのない椅子にするか、ソファーにするか。そういうことです。
ソファーに寝そべりながら、ラッコのようにお腹に食べ物をのせて食べたり、速く走ったり、ゆっくり走ったり、止まりたければそのまま足が地面につきます。自転車としての完成度は95%でしょうか。将来の若者が上りを速く走るための「何か」を解明れば100%になります。