泥除け(マッドガード)、フェンダー。CHERUBIMリカンベントでは一般的なものよりもかなり短くデザインしました。これは軽快な感じを出したかったのと、空力特性(エアロダイナミクス)を考えてのことです。
フェンダーは自転車美を語る上で一番取り上げられるパーツでしょう。フェンダーが付いていることに拘る人は多いですが、逆に付いていないことに拘る人もいます。更には付いている自転車の(ための)店、という人もいます。
フェンダーはロードレースでは使われないのでロードバイクへ付ける人は稀です。ツーリングでは雨や濡れた路面で自分が汚れたくないので付ける人が多いです。
ロードバイクは付いていないのが機能美ですし、ツーリング車は付いているのが機能美。自転車が使われるシチュエーションによって美的感覚も変わるということです。
冒頭でエアロダイナミクスと書きましたが、フェンダーは上部だけにするとタイヤやスポークの風の抵抗を弱める効果があります(Rene Herse Cycles が実験してくれました)。このためUCIのレースではフェンダーの使用を制限しています。空力的に有利であることを認めているんです。
誤解が暴かれる: フェンダーは速度を低下させない
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UCIが制限していなかったなら、ロードバイクにもフェンダーが付いていたことでしょう。選手達は少しでも抵抗を減らす努力をしています。昨今ではソックスを長くしたり、エアロタックというポジションをとってみたり、ブレーキレバーのブラケットを内側へ向けてみたり。ですので、関係者はフェンダーを付けたくてうずうずしているかもしれません。
もし、ロードレースでフェンダーを付けるのが当たり前だったら、それが機能美になっていたことでしょう。その時はショートフェンダーのはずです。
ランドナー等のツーリング車ではフェンダーの長さやステーの角度も考えて美しさを表現しています。それとは別にエアロを意識したフェンダーの場合には、違った美しさを表現することになります。僕は、このリカンベントにはこの長さにしたい、という意思をもってデザインしました。
リカンベントではない既存の自転車でショートフェンダーにトライして商品化されているものがあります。
こちらは東京サンエスのもの。ミドルフェンダーと呼んでいます。
こちらはダボス用のフェンダー。後ろはフルフェンダーかな? 正直、格好いいなぁって思います。
グラベル系が増えつつあるのでフロントを短めにしたものが増えるかもしれません。フレーム設計で想定していない場合、爪先が当たることがありますからね。
車種のタイプによっては色々やっていいと思うんです。それを見て他の人でもいいなって思う人が必ずいるはずですからね。ランドナーでもフロントバッグを付けた時の泥除けの長さや、泥除け先端にライトを付けた時の長さは多少変わるでしょうし。
太いタイヤでは野暮ったさやハンドリングへの影響もあります。浅型を選ぶと野暮ったさは軽減されると思います。横から見てタイヤとフェンダーに隙間ができないようにするのは、今昔ともに美的センスは同じです。
オートバイライダーの間でもフェンダーに拘りを持つ人達がいるようです。極太タイヤに隙間すれすれのフェンダー。カッコいいです。