幅員5.5m未満をゆく

自転車とサイクリングの日記です。

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MTBとGRVLとAll-roadとClassicパスハンターの狭間

MTBの説明は必要ありませんね。。GRVLはグラベルロードの略称で最近よく見かけます。Classicパスハンターは40数年前にパスハンターが誕生した時の姿。

当時のパスハンティングは林道(当時はダート)を離れて山道へ分け入り、古道の峠を越えるというものでした。その遊びに何を見出していたのか。多くの人は古人の背景を想像しつつ同じように自らの脚で押し歩いて、時には自転車を担いで歩き、そうした風情を楽しんでいたと思っています。自転車旅の一つの形態でした。

そうした文化的な遊びに使われていた自転車は、その心をもった自転車旅の人達が使っていたランドナーが改良されていました。ドロップハンドルをオールランダーバー(フラットバー)に換え、泥除けを外し、ギヤ比を低く(チェーンホイールを小さく)する等です。
そんな中でも更に積極的な人達はパスハンティングに特化した自転車(パスハンター)をオーダーしていました。そのパスハンターは活動地域やオーナーの意思によって様々な形をしていました。ある人はブルホーンだったり、ある人は乗って下ることを重視していたり(まだMTBはありませんでした)、雪道走行を考慮したり。そんな自転車が雑誌で紹介され目にするのはとても楽しくわくわくしたのを覚えています。


その後MTBが米国で生まれ日本へ入ってくると、積極的だったパスハンター達はこぞってMTB化した自転車に乗り始めました。それ以前に欲しくても存在しなかったパーツが、MTBの出現によって手に入ることになったのですから。
そして山道を下ることが楽しかった人達はMTBの流れに乗っていき、文化的思考が強かった人達は旧来の改造ランドナースタイル(Classicパスハンター)のまま楽しんでいます。


しかし、パスハンティング愛好者の中ででもClassiパスハンターでは物足りなく感じている人もいます。現代のパーツを上手く使って自分の楽しみに合った自転車に仕上げている人達です。
僕もその一人。今のQUARKパスハンターを作った時、パスハンターとは言わずにオールラウンダーな自転車として説明していたんですが、ビルダーの細山氏は「これはパスハンターだね」と言ってくれたのを覚えています。また、松田のコンビニに留めていた時に「このパスハンターはあなたのですか?」と声を掛けてくれた人もいました。
あぁ、この自転車でもパスハンターとして見てくれるんだな、と嬉しくなりました。

最近ではMTBは極端な自転車に進化してしまい、タイヤは極太イボイボ、ハンドルは幅600mm超。道路を走って楽しい自転車ではなく、あくまでも山道やダートを腰を浮かせて乗る感じです。もしかしたらMTBerの人達の中にもライトなMTBを好む人がいるのかもしれませんが、、、

そうした極端なMTBではなくダートを走って楽しむ人達が増えてきました。ロードバイクではなく、MTBでもない第三の自転車。それがグラベルロードです。欧米を中心に広がっていますが、残念ながら日本には走って楽しいグラベル(ダート)がありません。また、かつてはダートと言えば林道でしたが、40数年経った今、林道はほぼ舗装されてしまいました。

グラベルロードと時を重ねて台頭してきたのはAll-roadバイク。これは舗装でもダートでも高速で走れるスリックタイヤが特徴です。これまでの業界の常識をことごとく覆した高性能なタイヤが魅力的。グラベルレースでも最近ではAll-roadタイヤが使われることが多くなりタイトルを取っています。ですのでグラベルとAll-roadの区分けができなくなってきています。ブロックパターンのタイヤの出番は、アドベンチャー系のバイクパッキングレースの場が多いようです。
今後はもしかすると、グラベルという言葉は競技に使われ、タイヤの区別としてブロックタイヤ(Knobby)とAll-roadタイヤという表現になるかもしれません。

Source: Rene Herse Cycles


日本のスポーツサイクリング事情は欧米に流されてきました。MTBが流行れば老若男女がMTBに乗り、ロードバイクが流行れば街中はロードバイクだらけになりました。しかし、国内の道路状況や地域状況を考えなければ長続きしません。買い物や日常の脚としてのシティサイクルが、他国の影響を受けず日本独自に進化しているように、スポーツサイクル(競技ではなく)でも自分の趣向と環境に合った自転車を選ぶべきです。

僕はAll-roadバイクかパスハンターが日本のサイクリングに適していると感じています。「舗装ならロードバイクが一番」と言う人には、「競技をやらないならAll-roadバイクがいいですよ」と言いたいです。同じように速く走れますし、下りコーナーの安定感と楽しさは太いタイヤがいいです。フラットバーも下りではとても扱い易い。

パスハンターという自転車は売っていません。自分で作るしかありませんが、今はパーツが溢れていますから昔ほど困らないでしょう。欲しければ昔のパーツも手に入ります。個人のセンスを表現した自転車を作るのは楽しいものです。グラベルバイクを元に改良するのも良いかもしれませんね。そうした個性豊かな自転車にサイクリング中に出会えたら嬉しいです。