オートバイでは明確にタイプが分かれています。高回転の方が高出力を得られるという魅力もありますが、低回転のエンジン特有の心地よさに魅力を感じる人も多いです。スピードレースでは高回転型が使われ、スピードを競わないトライアルやツーリングでは低回転型が使われています。
これは自転車にも当てはまると感じています。昔のロードレースはともかく、現代では高回転で平地も峠道も走っています。巡航時は90rpm、とは良く言われていました。僕もそれを意識してパスハンターで郊外まで快走する時に90rpmで走っていました。速度計を見なくても身体に染み付いているほどです。
エンジンでは、高回転型はシリンダーストロークが短く、低回転型は長いです。コンロッドの長さやフライホイールの重さもこれに準じます。自転車に当てはめると、脚の長さやクランク長、自転車の重量も関係してきます。そう考えると、今ロードレース界で流行っているショートクランク(以前から一部の人達は採用していましたが)は、理にかなっているのでしょう。
高回転とショートクランクは、スピードを追求しないツーリストやエンデュランス系のサイクリストにはどうでしょうか。数年前に僕はクランクを170mmから160mmに変えて走っていたことがありました。10mmの長さの違いは一踏み目から明らかに違いを感じます。平地走行はとても楽だった印象が残っていますが、次第に急な上り坂のストレスを感じるようになって165mmに戻しました。リカンベントは167.5mmです。
高回転を維持するには心肺機能が伴う必要があります。平地巡航で90rpmに慣れたとは言っても、一日走って帰宅間際ではそれを維持することはできませんでした。ギヤは1段重く、回転数も80とか70rpmに落ちます。こうした疲れた時の状態が自分本来のスペックだと思っています。
自転車がリカンベントに変わって低回転型にはっきりと変わりました。構造によるものなのか、車重が重いためかは分かりませんが、元気な時でも巡航するのに90rpmは維持できず80rpmがいいところです。速度は10%増しですが。
エンジンのフライホイールの重さは慣性を増すためでもあります。低回転型エンジンでは特に重要な要素です。単気筒ではピストンの死点をスムーズに通過させるために、ある程度の重さが必要です。
自転車でこれに代わるものは何でしょう。ホイールや車重でしょうか。自転車ではとかく弱点である上り坂を優先するあまり、ホイールや車重は軽量であることが求められてきました。これは否定しませんが、自転車で走る気持ち良さの一つである惰性感、平地スーッと進む気持ち良さも捨てがたいものです。惰性感をより感じるには慣性が高い方が有利です。
惰性感、慣性力、これらは一漕ぎの後にやってくる、預金に例えると利息のようなもの。軽量なホイールや車重では利息が少ないということです。固定ギヤではフリーホイールよりも利息が福利になります (^^; 固定ギヤでトレーニングしている人が峠道でも重いギヤ比のまま上れるのは、この福利のおかげであると言われています。
急な上り坂では利息はいらないから少しでも軽くしたいものです。しかし、緩い上り坂では利息があった方がいい。リカンベントで明らかなのは、下りからの上り返しの速度維持が、軽量なロードバイクよりも断然有利だということです。短い上りならばスピードに乗ったままぐんぐん進みます。低回転トルク型からくるものかもしれません。
自転車の場合、人がエンジンですから体格や性質によって高回転タイプか、低回転タイプかはそれぞれで異なります。自分がどちらのタイプか見極める必要があります。あとは惰性感や慣性力とのバランスでしょうね。様々なトライができるのも自転車の楽しみの一つです。