これまでに3つのワイヤー引きディスクブレーキを使ってきましたので、それぞれの感想やディスクブレーキにまつわる経験を書き留めておきます。
TRP Spyre
ワイヤー引きディスクブレーキでは最も人気のある製品でしょう。造形も表面仕上げも美しいです。両側のピストンでパッドを動かしてローターを挟みます。
制動力はセンタープルブレーキと同じくらいでしたが、パッドをVesrahクロスカントリーに換えたら良くなりました。またピストンを押す両サイドの調整ネジが走行中に緩むようだったのでネジロックを塗布しました。
取り付けはポストマウントで、インターナショナルスタンダードのアダプターは専用品です。シマノ製とは互換がありませんので要注意です。
JuinTECH R1
ワイヤー引きでピストンを油圧で押す機構のディスクブレーキで制動力は TRP Spyre よりもいいです。写真ではパッドをASHIMAの放熱フィン付きに交換しています。
写真はシルバーっぽいですが実際はもう少し色が濃いガンメタです。表面のアルマイトは安っぽいですが全体的はフォルムは好きでした。
気に入っていたんですが2年半ほど使って問題が発生しました。
・ブレーキを掛けた後のピストンの戻りが悪い(ピストンリングの消耗?)
・ブレーキを掛けるとギュッて音がする(オイルの消耗?)
・引きしろが増えたような気がする(オイルの消耗?)
特にピストンの戻りが悪いのは致命的でピストンリングの劣化による可能性が大きいです。油圧ディスクブレーキは押したパッドを戻すために、ピストンリングのたわみを利用しています。このため油圧ディスクブレーキではこうした問題や劣化は必然とも言えます。どのくらいの経年でこうなるかは分かりませんが僕の場合は2年半でした。
ブレーキレバー
フラットハンドル用のブレーキレバーの引き代は、カンチブレーキ用とVブレーキ用があります。ワイヤー引きディスクブレーキではカンチレバー用を使います。
しかし、カンチレバー用といっても引き代は製品によって差があります。僕はブレーキレバーの遊びを多めにして使うのが好みなので、ディスクブレーキにしてから急制動でレバーがハンドルへ底付きしてしまうことが何度かありました。そこで引き代が大きいブレーキレバーへ交換することにしました。
SUNTOUR XC PRO
引き代は支点と作用点の距離に比例します。それまで使っていた TEKTRO FL540 が19mmなのに対し、SUNTOUR XC PRO は24mmで、これに交換することにしました。
ブレーキパッド
ブレーキパッドの形はブレーキ本体に合わせて様々です。基本的にシマノ互換ですが、TRP Spyre は中央穴式で JuinTECH R1 は横穴式です。
中央穴式
横穴式
この横穴式ブレーキパッドには大きな問題が潜んでいました。それはパッドが擦り減ってくるとブレーキが効かなくなるという大問題です。上の写真にあるスプリングの中央のブリッジ(橋)がつっかえ棒となってしまうんです。このタイプのディスクブレーキをお使いの方は注意してください。
GROWTAC EQUAL
シマノ独り勝ちな自転車パーツ業界へ一石を投じたディスクブレーキ。今までにない独創的な機構を持ち、制動力もこれまでのものを上回ります。パッドを押すのは片側のピストンで、これまでは制動力が劣る要因とされてきましたが、これを覆しました。ワイヤー引きディスクブレーキの頂点です。
しかし、しばらく使ううちにブレーキレバーの引き代調整が頻繁なので検証したところ、ブレーキパッドを押す(片方は保持する)調整ネジが走行中に緩んでいました。メーカーへ打診したところ代替品が届き、これを使ってからは緩むことはなくなりました(TRP Spyreでも起こっていたことをすっかり忘れていました)。TRP Spyre ではネジロックを使って自主対応しましたが、GROWTACではネジロックではなくネジに埋め込むスプリングで緩みを抑えています。
一難去ってまた一難。また問題が発生しました。小石が挟まってブレーキレバーが引けなくなるという大問題。GROWTACへ報告したところ、他に同様の報告が無いため対応はしないということです。死にたくありませんので自作プレートで小石が挟まらないように対応しました。
ディスクブレーキの主流は油圧式ですが、ワイヤー引きディスクブレーキは構造が分かりやすくメンテナンスも優しいことで、日常的なサイクリングやツーリングには適していると思っています。ブレーキパッドの消耗は早いですが、交換や交換後の当たり調整はとても楽です。また小さい力で高い制動力が得られることは間違いありません。制動力に不安を感じる場合はブレーキパッドを Vesrah 等へ交換すれば解決できるでしょう。