幅員5.5m未満をゆく

自転車とサイクリングの日記です。

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ハンドメイド雑感

今年のハンドメイドバイシクル展には行きませんでした。コロナの感染が急速に高まりつつあったからです。
土曜に行ったランブリンマンさんからの情報で、前輪駆動のリカンベントがあったことを知りました。発注者や制作者とお話ししてみたかったんですが… 仕方ありません。

oryzasativaさん撮影


昨今の自転車業界はレースシーンを中心として動いていますが、そのカーボンフレームでは革新は生まれ難いです。小規模な製作所では技術や設備の問題と、レースの規定でがんじがらめにされているからです。その点、鉄素材が中心のハンドメイド業界では様々なチャレンジができます。その発表の場としてハンドメイドバイシクル展は意味のあるものだと思っています。

海外ではNAHBSも同様の発表の場ですが、日本で開催されるハンドメイドバイシクル展は、もちろん日本独自の地域性が濃い出展なのは言うまでもありません。数年前は古典的なランドナーが多い印象でしたが最近はその他も多くなってきました。これはとても良いことだと思っています。発注者の世代交代が進んだことと、新しい製作者が生まれてきた表れでしょうね。

美的観点で競い満足するものから、走って楽しむ、使って楽しむものへの関心も高まっているんだと思います。日本独自の文化である輪行に特化した出展も多いです。既存のランドナーによるアルプス式輪行から、構造的に新しい発想で制作したものが広まれば、後に革新と呼ばれることになるかもしれません。

Rene Herse Cycles のワイドタイヤ革命は日本では認知度が低いのか、見かけることは少ないです。行った人達のブログを見ても来場者の中に見られた程度。グラベルロードやMTBも少ないです。
日本には走って楽しめるダートが少ないことも一因でしょうね。林道は勾配が急になったことから(=距離が短くて済む、=コストが少なくて済む)舗装が多くなりました。ダートであっても急勾配は水流による浸食でガタガタになり、走って楽しくありません。

リカンベントはどうでしょうか。今回出展されたものはCruzbike式前輪駆動の輪行仕様でしたがシート角は20度くらいの高速タイプです。ブログ上の話題が少なかったことから、会場での注目度も低かったものと思われます。
革新を発表する場として考えるならリカンベントは最適だと思うんですが、一番のネックはフレームの設計でしょうね。既存のマスプロは大量生産なので曲げたアルミチューブが使えますが、クロモリでそうしたチューブはありません。ケルビムのようにチャレンジして曲げるか、あるいは真っすぐなチューブを接合するか、トラス構造にするか、です。

トラス構造は強度的に安心できますが、接合箇所の数だけ製作コストが掛かります。スペースが必要になるので形が制限されます。また積載能力が低くなります。一本のメインチューブを途中で接合するのは強度的な不安がぬぐえません。曲げるのは技術的に難しい。
こうした強度の問題に加え重さの問題も解決できないと、ハンドメイドとしてのリカンベントは成功できません。チューブメーカーが曲がったチューブを供給するには需要が必要ですしね。

別の視点では、既存の自転車のフレームを使って追加工するという手もあります。Cruzbike T50 のメインフレームを使って、前三角やシートチューブを別のデザインにするとか。V20にワイドタイヤを入れるために前三角や後ろ三角を作り替えるとか。この場合、フレームはアルミが殆どですからアルミを扱えるビルダーを探すことになりますが、嫌がりそうですね (^^;