幅員5.5m未満をゆく

自転車とサイクリングの日記です。

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変速は楽しい!

子供の頃に最初に乗っていた自転車にはもちろん変速機は付いていませんでした。団地だったので近所の年上の子供達(お兄さん達)の変速機が羨ましくて仕方ありませんでした。


小学校の中学年になってようやく変速機が付いた自転車を買ってもらった時は本当に嬉しかったのを今でも思い出します。これで坂も楽に上れるし、スピードも出せる、ってね。


時を同じくして「サーキットの狼」に引っ張られてスーパーカーブームになって行きました。僕も車は大好きでミニカーやプラモデルは数えきれないほど買いました。スーパーカーも好きでしたが、漫画の中の走りの方にも興味ありました。飛鳥ミノルが駆るランボルギーニミウラが、高速からスピンターンで直角に曲がる時のシフトチェンジの速さやに、風吹裕矢と同じ気持ちになっていました。


小学生ですから車は運転できません(空き地で父親の車をソロソロと動かしたことはありました)。早く大人になって車が欲しいと思いながら、自転車を操る腕を上げていったものです。コーナー手前では素早くシフトダウンして出口でスムーズに加速。不整地も多くあったのでスピンターンやドリフトもよくやっていました。

当時はトップチューブに付いたシフターもありましたが、あれは今でいうなら車のオートマみたいな感じですね。一段ずつしか変速できないようでしたが、既にパチパチというインデックス機構が備わっていたように思います。僕の自転車にはフリクションのシフターだったので、一気に2~3段飛ばしてシフトダウンができました。

フリクション式のシフターはコツがいります。レバーを少しオーバー気味に操作し、脱線したチェーンがギヤに掛かったところでレバーを戻すと、スムーズかつ確実な変速が完了します。チェーンに掛かり易いように足に入れる力を若干弱めることも必要です(でした)。こうしたコツを当時の小学生達は自然に身に着けていましたね。


車への憧れの前にオートバイに乗りました。オートバイの変速レバーは左足で操作します。シフトアップは簡単ですが、シフトダウンでは一旦アクセルを吹かしてエンジンの回転数を次のギヤへ合わせる必要があります。走っている速度とギヤ比とエンジン回転数によって感覚的に覚えていきました。速度変化が大きい時にはこれを数回繰り返します。

車の場合はこれをヒール&トウと言う操作で行います。つま先でブレーキを掛けつつ踵でアクセルを踏み、シフトダウンしたギヤ比にエンジンの回転数を合わせてあげる、というものです。しかし、市販車のペダルのセッティングはアクセルとブレーキが面一になっていませんので(ブレーキがアクセルより手前に位置しています)、ヒール&トウはできません(ブレーキペダルの取り付け部分を調整して位置を前後できますが、リスクが伴いますので十分注意しましょう。ブレーキランプの調整も必要になります)。

車の変速はシフトノブで行います。最初に手に入れた車がスズキのジムニーで、下から伸びたシフトノブが遠くて変速がスムーズにはいきませんでした。そんな不満を感じる人が多かったのでしょう、シフトノブを延長するパイプが売っていましたね。バスのように長くなりましたが操作性はアップしました。
それと、ジムニーは純オフローダーなのでシフトノブの他にもう一つ、トランスファーを操作するノブも生えていました。自転車で言うと、後ろのフリー5速が車の5速だとすると、前のチェーンホイール2枚がトランスファーに相当します。トランスファーでギヤ比を変えることで、極低速が可能になるというものです。


話しを戻すと、この頃から自転車の変速はインデックス機構が台頭してきましたね。フリクション式のようなコツを覚えなくても、誰もが確実に素早く変速できるのは素晴らしいことです。
シフターはダウンチューブにあったWレバーから手元へ移り、グリップシフトやブレーキレバーで操作するもの(シマノSTI等)へと変わりました。STIは使ったことがありませんが、オーダーしたパスハンターでグリップシフトを導入しました。インデックス機構と手元シフトは変速の一大革命でしょう。オフロードでは手元シフトの恩恵は言うまでもありません。競技でないサイクリング時でも、それまでと比べると変速の回数は雲泥の差で、変速が素早く完了するため速度変化が少なくなり、疲労も少なくなりました。


レース業界ではこのインデックス機構と手元シフトの精度を上げることに力を注いでいます。ワイヤーに変わって電動も出てきました。他方、一般車では内装ハブギヤが着々と進化していました。日本ではシティサイクル(ママチャリ)で多く使われていますが、欧米ではもう少しスポーツよりの自転車でも積極的に使われています。
内装ハブギヤはクランクの回転やリヤホイールの回転に影響されずに変速ができる。これは僕にとって第二の大変革でした。初めて自分の自転車に組み込んで変速した時の感激は、幼い頃に初めて変速機付き自転車に乗った時以上かもしれません。


サイクリングやツーリングでは急坂がつきものです。そこではクランクの回転数や駆動輪の回転数が極端に少ない状態になりますので、外装変速機では事前に軽いギヤへ変えておくことが必須でした。内装ハブギヤでは15%の激坂で時速4kmの極低速でも瞬時で変速できるんです。
外装変速機でもそうだと思いますが(最新式を使ったことがないので)、フルトルクの最中に変速するのは難しいと思います。これは内装ハブギヤでも同じです。違うのはクランクの上死点の僅かな低トルク時に変速できるという点なんです。


この内装ハブギヤの利点に更に磨きをかけているものがあります。それはローノーマル。一般的な変速機はトップノーマルで、ワイヤーの引きを弱める(スプリングを弱める)とトップギヤに戻ります。ローノーマルはこの逆でローギヤに戻るもので、これによってシフトダウンのスピードが速まるのです。スプリングが弱まる方向なので操作の力もいりません。とても気持ちがいい変速システム。サイクリングを楽しくしてくれるアイテムです。

これから先、これ以上に興味が湧く変速システムが誕生するでしょうか。出てきたら是非試してみたいものです。