幅員5.5m未満をゆく

自転車とサイクリングの日記です。

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ツーリング自転車としてのリカンベント



海外ではツーリングというと荷物を満載して何日にも渡る長い旅のことですが、ここでのツーリングは数日程度の短い旅という意味で扱います。

ツーリング用の自転車として一番に名乗りをあげるのはランドナーです。ツーリングの為の車種ですから誰もが認めることでしょう。
しかし、ランドナーに代表されるサイクリング自転車の形は、進化が止まってから数十年が経ちます。これを「完成されている」と言う人もいますが… リカンベントを知った僕には疑問です。文化継承という意味では大賛成ですが。


ツーリングはロードレースのようにUCIに規定された中で競うものではありませんから、もっと試行錯誤をしてツーリングに適した物へと進化できるはずです。

余談ですが、リカンベントの歴史は一般的な自転車と同じくらい古いです。僕が乗っているリカンベントが最新式か?と言われると、そうではありません。

 

ツーリング用の自転車に求められるもの。言い換えるとツーリングで出くわすもの。

 

荷物の積載

ツーリングの荷物量は、前傾自転車の場合はフロントバッグ+サドルバッグでしょう。これと同程度の荷物をリカンベントに積む場合、多くはパニアバッグになります。キャリヤやバッグは一般的なものを使うことができます。

荷物を積載した時の走行安定性ですが、僕のリカンベントの場合、荷物無しで前後加重配分は 4:3 です。これにパニアバッグを装備するといい塩梅になって安定が良くなります。


ちなみにリカンベントでこれ以上の装備(長旅)をするには、パニア用のキャリヤの上と、シートの下へ専用のキャリヤでバッグを装着することになります。

様々な自然環境(暑さ・寒さ・夜・雨・風)

暑さ寒さ夜間走行はリカンベントだからという特別なことはありません。

雨具はセパレートタイプになります。ポンチョは無理。ツバ付きの帽子やサイクルキャップ、バイザー付きのヘルメットをかぶると雨は目に当たらずに済みます。リカンベントは頭の角度も上向きになりますので、ツバやバイザーをより下へ向ける必要があります。僕はハンチング帽を被っていますが問題ありません。


マッドガード(フェンダー)は一般的なものを装着できます。リヤは付けないと後頭部への飛沫が凄いです。フロントは無くても飛沫は多くありません。シートが防いでくれます。
フロントのマッドガード無しで本降り雨の中を走ったことがあります。しぶきが前方から風でひるがえって顔へかかる懸念がありましたが、そういうことはありませんでした。

向かい風はリカンベントでも感じます。ただ前傾自転車に比べると格段に影響は少ないです。リカンベントで良かったと思う場面です。

 

様々な道(市街地・峠道・舗装・ダート・雪道)

市街地は信号でのストップ&ゴーが多発します。リカンベントは苦手という意見が多いですが、僕は内装ハブギヤを使っているのでスタートが遅いことはありません。軽いギヤからシフトアップを重ねて直ぐに巡航速度に達します。ロードバイクの立ち漕ぎスタートと変わりありません。

リカンベントでの平地巡航速度は、前傾自転車に比べて10%ほど速いです。これは定説通り。荷物を積んだ状態でもロードバイクと同じような速度です。

上り坂は自転車の重量次第です。リカンベントが前傾自転車より重ければ遅いですし、同じ重量ならリカンベントの方が速いです。海外で PowerTap を使った検証結果が出ていて、勾配20%で同等でこれ未満はリカンベントが有利です。

EFFICIENZA AERODINAMICA DELLE BICICLETTE RECLINATE ? TEST COMPARATIVI IN SALITA


僕のリカンベントは14.5kgなので、それなりの上り具合です。けれど、勾配20%くらいまでなら上れますし、一日の積算標高2,000m超でも走行時間は殆ど変わりません。


下りはリカンベントの得意とするところです。風の抵抗が少ないですからスピードが出ます。視界良好、ブレーキング容易。惰性で進むことは自転車が楽しいと感じる最たるものです。それを快適な姿勢で楽しむことができます。
前傾自転車では特にドロップハンドルの場合、強いブレーキングをするには更に前傾をきつくすることになります。長い下りでは楽しみが次第に半減していきます。


リカンベントで荒れたダートを走ると、抜重出来ない為に跳ねてしまい、気持ちよくありません。
良く締まったダートでは平地と下りなら楽しめます。長野から秩父へ下る中津川林道は予想以上に楽しめました。
ダートの上りは、僕のリカンベントは前輪駆動なのでスリップして走れません。後輪駆動であっても前述したように跳ねてしまうので、苦手であることは間違いありません。ただし、サスペンションが付いていれば苦手ではなくなります。



雪道をリカンベントで走った経験はありませんが、ダート以上に苦手だと思います。スパイクタイヤを履けば楽しめるかもしれません。

長時間の走行

前傾自転車は長時間走ると身体へのダメージが大きいです。ハンドルと手の関係、サドルとお尻の関係、前傾と首肩背中の関係。
人によっては大したことはないと言いますが、多くの人が痛みや凝りに悩まされています。その証拠がグローブのパッドであったり、レーサーパンツのパッドです。長距離になればなるほど苦痛になってきます。

リカンベントはこうした苦痛が皆無で、疲れるのは脚だけ。
では脚の疲れ具合はどうかというと、前傾自転車よりも疲れないのです。学術的な検証はされていませんが、僕は経験として感じています。前傾自転車と同じコースを何度も走っていますが、いずれもリカンベントの方が疲れが少ないです。翌日に疲労を持ち越しません。

 

トラブル(パンク・パーツ破損)

この比較はリカンベントが専用部品をどれだけ使っているか、ということと同意です。
僕のリカンベント(CruzBike T50)では、フレームを除くとパーツの殆どが一般的なものです。サドルとシートの違いくらい。
前輪駆動なのでチェーンの長さも普通ですし、ワイヤーの長さも普通です。
ですからフレームとシートを購入して、パーツは全て自分で揃えました。

 

トランスポート(車載・輪行

リカンベントの車格は、前傾自転車に比べると前後に250mm、上下に200mmくらい大きいです。

車載は荷室(前席以外)のスペース次第です。ワンボックスなら分解せずに積載できますし、少し車高が低いSUVなら前後ホイールを外して正立させて前後エンドを固定。自分一人の運転ならホイールを外さずに横倒しです。


輪行も可能です(僕はまだやったことがありませんが)。僕のリカンベントはフロントフォークを抜けば輪行できるサイズに収まります。フロントフォークが抜けないタイプのリカンベントは、長さが輪行規定をオーバーすることがあります。BBからリヤハブまでの長さが結構ありますから。
総じて前傾自転車よりも分解と組み立てに時間が掛かるであろうことは想像通りです。

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総括するとリカンベントは路面の状態が良いならツーリングに適していると言えます。現代では民家がある場所なら舗装されていることが殆どです。ダートを求めてツーリングする場合を除き、リカンベントはツーリングの醍醐味を高めてくれる車種だと感じています。


とはいえ、お気に入り自転車でツーリングしたいのが趣味人です。リカンベントにも様々なタイプがありますので、その中から気に入ったものが見つかれば、新たなツーリングの世界が広がっていくことでしょう。