シート角
僕が乗っているリカンベントはCruzbike社のT50というものです。
Cruzbike社には他に V20, S40, Q45 があり、それぞれの数字はシート角(水平からの角度)を表しています。
ちなみに僕のT50はシート角を約45度に調整しています。
Cruzbike社はラインナップ全てが前輪駆動です。
前輪駆動の利点はチェーンの長さが後輪駆動よりも短くて済むため駆動効率がいいことです。長い鉄道列車をイメージするとよく分かります。先頭の駆動車両から最後尾の車両まで力が伝達するには時間が掛かりますよね。
逆に欠点はハンドル操作の癖と小回りができないこと。前輪をペダリングで左右に蹴りながら走っているようなものです。ただ、これは直ぐに慣れて身体が順応します。
Cruzbike T50 に出会うまでもリカンベントには興味がありました。いつかは乗ってみたい、と。でも魅力的なデザインに出会えなかったんです。
初めてT50を見た時に「これだ!」と感じるものがあり、そこから購入を決意するまで長い時間は掛かりませんでした。
リカンベントはシート角が走行性能や操作性に大きく影響するようです。
角度が寝ているものは風の抵抗が少なく平地でスピードが出ますが、その代り低速や急坂の性能が劣ると言われています。
駆動伝達力では足と腰と頭がつくる角度が140度の時に一番効率が良いという学術論文があります。
これは足と腰が水平なリカンベントの時に、シート角が水平から40度ということです。
これを裏付けるような情報として、シート角がかなり寝ているリカンベントでは、ロードレーサーよりも出力が低いことを、パワーメーターで調べた人がいます。
風の抵抗と駆動伝達力を考えて平地ではシート20度が良い、という結論をCruzbike社は出したのだと思っています。
また、他のメーカーのリカンベントでも、シート角が寝ているものは足が腰よりも上になっています。腰は曲がっていないと力は出せないということですね。
T50の詳しい設計基準は分かりませんが、シート角が一番立っていることからスピード重視ではないことは分かります。
前傾自転車がロードレーサーからシティサイクルまであるとすると、T50はシティサイクルのカテゴリです。
それでも風の抵抗はロードレーサーよりも少ないので平地ではスピードが出ます。
T50は適応範囲が広いのです。
前後重量配分
前輪駆動のリカンベントはペダルが前輪を跨いだ先にありますので、設計上シートの位置を大きく前後させることができません。
したがってシート角が寝ると後輪寄りの重量配分になり、シート角が立つと前輪寄りの重量配分になります。
僕のT50(シート角45度)では前後重量配分が 4:3 です。
前輪重量過多では、急ブレーキ時に前方宙返りしてしまう懸念がありますが、今のところ心配はありません。
サドルに座った状態のロードレーサーよりも前方宙返りの危険性は少ないです。これはリカンベントの方が重心が低いからです。
因みにロードレーサーの前後重量配分は 4:6 くらいです。
(追記:ロードレーサーは走行時は重心が低いですが、急ブレーキを掛けると手へ一気に力が集中して重心が急激に高くなってしまいます)
前後重量配分は登坂能力に影響します。
T50は勾配20%を越えるとスリップして上ることができません。20%というと前傾自転車でもシッティングでかろうじて上れる勾配なので、T50も前傾自転車と同じくらいの急坂を上れます。
もしT50ではなくS40を購入していたら、今よりも走れる範囲が平地寄りに限られていたことでしょう。
平地では歩くような速度からロードレーサーの巡航速度域まで楽しめます。
急坂を下る時の前方宙返りの危険性はロードレーサーよりも低く、勾配20%の急坂を上れます。
パニアバッグを装備すれば、泊りがけのツーリングにも、キャンプツーリングにも行けます。
シート角45度は日本の山方面をサイクリングする上で「黄金比」かもしれません。
一台目のリカンベントがここまで理想的なものになるとは思っていませんでした。
T50を初めて見た時に「これだ!」と感じたのはこういうことの予感だったのかもしれません。