幅員5.5m未満をゆく

自転車とサイクリングの日記です。

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御岳山アタック(平均勾配16%) 

ロードレーサーに乗っていた若い頃は、基本的に「坂は休まず(止まらず)に上りきること」をモットーにしていました。
今ほど有名ではなかった乗鞍(畳平)も松本から(信号以外)はノンストップで上り切りました。
単なる自己満足の行為ではありますが、達成感はもとより、各地の峠を風景ではなく坂のきつさをもって身体に記憶していったようなものです。
そんな若気の至りも、ツーリングへ軸を移すようになってからは鳴りを潜め、上りでも景色の良いところでは躊躇うことなく立ち止まるようになりました。

僕の日帰り行動範囲の中で激坂の場所は、先日上った駿河小山から山中湖へ至る明神峠・三国峠道志川から上る厳道峠、奥武蔵の子ノ権現、があります。
それぞれキツさには特徴があって、勾配はそこそこだけれど標高差があるところ、逆に標高差は大してないけれど勾配が急なところがあります。
激坂を上ることに心血を注いでいるわけではありませんので、まぁ、有名どころは上ったので良しとしていました。

最近の走りは舗装路がメインでたまに古道のちょっとしたパスハンティング。山道下りメインの山サイはご無沙汰だったので、そろそろ太いタイヤを履いて出かけたいと思って探していたところ、御岳山がターゲットになりました。
下りルートは御岳山から北側の尾根伝いに大楢峠を経て上坂(あがっさか)へ下るもの。

さて、上りはどうしたものか… 担ぎ上げは嫌だし…
そういえばケーブルカーの下に確か山頂周辺の住民の生活道として使われている道があったはず。
このルートなら担がなくていいし、押して上れば1時間程度かな。

一応ルートラボで計測してみました。
自動で 奇跡 軌跡は引いてくれませんので、手作業で線を繋いでいくと、距離2.6kmで標高差417m。平均勾配16.0%。


どんな道なんだろう。
ネットで検索すると詳しいブログを見つけました。
九十九折フェチの僕には大歓迎のコースです。

http://icedivider.com/2014/09/29/3587/2/
(拝借すみません)


このブログを見てから、なぜか気持ちがざわつき始めました。
16%なら明神峠のキツい部分と同じくらい。だったら乗って上れるかもしれない。
でも平均で16%ということは、それ以上の勾配も含まれるはず。子ノ権現級か…

乗れるところまで上ってみよう。

苦しくなったらステンディング・スティルで(足をつかずに)休憩しながらでも。
それがダメなら足をついて休み休み。
気力が萎えたら押しでもいっか。

そう考えるうちに、気持ちは若かりし頃に戻っていました。
挑戦してみよう。


 ●○●○

僕の自転車のホイールは26x1.5HEでギヤは前35T後16Tですが、内装ハブギヤなので一般的な外装変速機とは比べられません。
クランク一回転で進む距離で比較すると、凡そツーリング車のローギヤと同じくらいです。

距離 ギヤ サイズ
2317mm 35Tx16T 26x1.5HE
2302mm 26Tx24T 650x38A
2299mm 34Tx31T 700x23C


 ●○●○

山道を下るため、いつもの1.25HE(29mm)から1.5HE(38mm)に履き替えたホイールはもっさり。
新品のタイヤなのでトゲトゲがたくさん生えていることもあります。
御殿峠の上りではいつもより時速で2kmほど遅い状態。

青梅から奥多摩へ向かう道はいつも脚に疲労が溜まる嫌な区間です。
次第に乳酸が溜まって動きが鈍ってきます。これではまずいので御岳駅前のコンビニで休憩。

川を渡っていよいよ御岳山へ向かいます。
ケーブルカーの駅がある滝本までも既に急勾配で16%。でもこの程度ならなんとかいけそうです。

滝本につき、これから上る道の前に立ちました。
その激坂に思わず笑ってしまいました。
これが続いたらムリ。緩急あればなんとかなるのかも。


息を整え、バカな挑戦がスタートしました。

上り始めて直ぐにウィンドブレーカーを脱ぐのを忘れたことに気づきました。でももう後戻りはできません。前進あるのみ。

じわり、じわり、ペダルを踏みしめます。
直ぐにに汗が噴出してきます。
バーエンドを握る手が滑らないように注意します。
後ろタイヤが路面を引っかく音がします。

男なら九十九折はインを付け! と言われていますが、今回ばかりはそんな余裕はありません。
コーナーの外側の勾配の緩い所を選びます。

道幅は2m弱。
蛇行して勾配を緩めることもままなりません。
数十メートルおきにある車がすれ違うための退避スペースも使って、なるべく勾配が緩くなるようにコースを選びます。

下からエンジン音が聞こえてきました。
まさか。このタイミングで来るとは…
前述のブログにもあった、ヤマト便の軽自動車が上ってきたのです。先方のエンジンも悲鳴を上げています。

九十九折の外側に避けて抜かさせようと思いましたが、自動車とてこの急カーブのインを走ることはできません。やばい、余分な体力を消耗していきます。
直線部分の退避スペースに入って道を空け、ハンドサインを出すとタイミングよく抜かして行きました。
運転手も、僕が足をつきたくないことを察してくれたようでした。

脚が攣ればそこで ジ・エンド。
激坂で上半身にも力が入るので、腕も疲労します。もちろん腕が攣ってもそこで ジ・エンド。
身体の調子にも気を配りながら力を入れます。

油断すると前輪が浮き上がってしまうので、重心の位置にも気を配ります。
サドルの先端がお尻に突き刺さりそうです。

何度か立ち漕ぎもやってみましたが、数メートルなら大丈夫ですが、それ以上になると息が上がってしまいます。
それを整える余裕をつくれませんので、その後はシッティングだけにしました。
血液はなるべく脚の筋肉へ送り込む必要があります。

意識がもうろうとしてきたころ、九十九折が終わって勾配が緩まりました。
一枚くらい写真を撮ろうと、カメラをポーチから出して撮りました。


う、、ポーチに入らない。

冬用の厚い手袋なのと疲労が合わさって思うように入りません。
痛てててて。左腕が攣ってしまいました。うう、ジ・エンドか。
勾配が緩いことが幸いして、上半身を解すようにすると痛みがなくなりました。

ケーブルカーと交差しました。
今はどのくらいの地点なんだろう。
転ばないように注意しながら腰にぶら下げた地図を確認すると、半分は過ぎた感じ。

上りきれるかもしれない!

道は斜面を巻くようにして、それでもまだ時折り激坂が現れ、マジかぁ〜、とブツブツ言いながら攻略します。

チェーンが軋みます。
自転車もねじれます。
僕の膝にも大きな負担がかかります。
何もいいことはありません。

すれ違うハイカーは意外と冷ややかで、励ましの一言もありません。
唯一下ってきた原チャリの男性が、道を空けたことに「どうもありがとうございま〜す」と言ってくれただけ。

そしてようやく民家が現れました。
よし、あと一息だ!

しかし、ここで道が悪くなりました。
これでもか、鼠返しか、と思うような最後の仕打ちです。
舗装の中に大きめの石が埋め込まれて凸凹になっているのです。
ただでさえ急勾配で速度が遅くバランスに気を遣わなければならないのに、です。

最後のカーブを慎重に慎重にクリアし、到着しました。

上りきりました。


得た物は忘れかけていた爽快感と、自己満足。それだけです。

でも、自転車で坂を上るというのは、人それぞれ多少の差はあると思いますが、こういうことだと思います。

改めてルートラボを確認すると、九十九折区間の平均勾配は20%を超えていました。
勾配、標高差、首都圏では一番といっていいでしょう。
皆さんも身体を壊さない程度に挑戦してみてください。


メインのはずだった山道下りの様子はこちらの写真を参照ください。
https://goo.gl/sqqPbL


全ルート
http://yahoo.jp/4EiUj4

走行距離 130km

06:45 出発
10:10 御岳駅
10:47 滝本
11:29 御岳山
12:36 大楠峠
14:41 上坂(あがっさか)
18:50 帰宅